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ソプラノ アンドレア・ロストに寄せて
岸 純信(オペラ研究家)

 ハンガリーが誇る世界的なプリマドンナ、アンドレア・ロストは大の日本通である。 以前、インタビューの席上で彼女はこう語った「ハンガリーと日本には共通するところが多いと思います。よく例に出されるように、水はハンガリー語でvíz【ヴィーズ】 だし、お塩はsó【ショー】と言います。語感が似ているでしょう?(笑)それに、自分を日々省みようとする姿勢や、凝縮された美の感覚なども、私たちは似ていると思うのです。だから私は日本が大好き。プライヴェートでもよく訪れるんですよ。東京だけじゃなく、京都にも行きます。俳句の境地が好きなのね」。

 歴史あるブダペストで育ったロストだけに、同じく伝統を重んじる日本の古都にも強く魅せられるのだという。確かに、西洋人としては小柄で可憐な面差しの持ち主で、着物もなんとなく似合いそうだ……と思ってインターネットで検索してみたら、その通り、町家をバックに舞妓の扮装をする彼女らしき画像が現れた。口元にさした紅が白塗りの肌によく映えて、本人にも満足げなポートレートになっていた。

 オペラ歌手として世界の五大歌劇場を制覇し、歌曲のリサイタルも各地でたびたび開いてきたロストだが、その声の個性を思う時、筆者の脳裏に浮かぶ一字がある。実は、それが「紅」の色合いなのだ。凛々と鳴り響き冴えわたる彼女の声には、いつも、洋紅色の光を連想してしまう。スカラ座で絶唱した《リゴレット》のジルダでも、ロンドンやパリ、ウィーンで喝采を博した《ランメルモールのルチア》のヒロイン役でも、彼女の声音はキャラクターの悲痛な胸の内を鮮やかに表現する。それは、パステルカラーの穏やかさとは一線を画し、厚みある暖色系の色調とも違うもの。あくまでも、透き通った光線ならではの鮮烈な訴えかけであり、「人の心を貫く」歌声なのである。

 さて、そのロストが今回の来日で披露するアリアや歌曲は、彼女が自らの歌手人生を思い返しつつ、さらに一歩前進しようという姿勢を強く表すプログラミングである。前半では、長年歌い続けるモーツァルトから伯爵夫人の登場の哀感漂うアリア(《フィガロの結婚》)。同じく得意のドニゼッティからは、メトロポリタン歌劇場へのデビュー役でもあるアディーナのしみじみとしたソロ(《愛の妙薬》)。そして、キャリアの最初期から歌っているフランスものからは、コロラトゥーラの技を華やかに操る〈宝石の歌〉(《ファウスト》)。さらには、独墺圏での活躍ぶりを象徴するひとこまとして、生誕150年を迎えたリヒャルト・シュトラウスのリートを5曲歌い上げるという。

 一方、後半の選曲は、「さらに一歩踏み出す」ロストの心持ちがはっきりと窺えるものに。ベルカントの最高峰と見做される至難のアリア〈清らかな女神よ〉(《ノルマ》)から始まり、世紀末のオペラ界にヴェリズモの流れを呼び起こした直情的な名曲〈鳥の歌〉(《道化師》)と、同時代の作ながら抒情的なメロディが初々しい〈私はつつましい芸術のしもべ〉(《アドリアーナ・ルクヴルール》)が続く。そして最後に、彼女のレパートリーで最もドラマティックな〈ある晴れた日に〉が聴けるのも楽しみの一つ。日本女性の心に深く共感するソプラノならではの、ひときわ劇的な歌いぶりに耳をそばだてて頂こう。

 ちなみに、ロストは今回、お国ものの一曲として、19世紀のエルケルの人気オペラ《バーンク・バーン》の第2幕から、英雄バーンクの妻メリンダが歌う儚げなアリア〈お願い、私を殺して〉を採り上げる。実は、先述のインタビューの折、筆者が真っ先にこのオペラの録音(&映像)について話を切り出したところ、当のロストは「唖然と」してしまい、しばらく声も出せない状態に陥った。どうも、国外でこの作品について訊ねられることが一度も無かったようで、ひたすら驚いてしまったらしい。

 「貴女が日本を理解して下さるように、我々もハンガリーを理解したいと思っています」― 筆者はそこまではっきりとは口にしなかった。でも、こちらの想いがついに届いたのだろう。だから今回、この名曲を歌ってくれると聞いて、何より嬉しく思っているのである。大学でオペラ史の講義をする際も、国民楽派の先駆けとして《バーンク・バーン》は必ず紹介し、ロストの切々とした歌いぶりが、オペラを知ったばかりの若者たちをも深く捉えるさまを、毎回目の当たりにする。だからこそ、彼女の瑞々しい歌いぶりが、熱心な声楽ファンの皆様にとっても「新たな一歩」を拓く鍵になればと、心から願っている。

 
曲目

前半

モーツァルト:《フィガロの結婚》~“愛の神よ照覧あれ”
W.A.Mozart : «Le nozze di Figaro» ~ “Porgi amor”
グノー:《ファウスト》~ 宝石の歌“なんと美しいこの姿”
C.F.Gounod : «Faust» ~ Air des bijoux “Je ris de me voir si belle”
ドニゼッティ:《愛の妙薬》~“受け取って、あなたは自由よ”
G.Donizetti : «L’elisir d’ amore» ~ “Prendi, per me sei libero”
R.シュトラウス:チェチーリエ / 明日の朝 / ばらの花環 / わが子に / 献身
R.Strauss : Cäcilie op.27-2 / Morgen op.27-4 / Das Rosenband op.36-1 / Meinem Kinde op.37-3 / Zueignung op.10-1

後半

ベッリーニ:《ノルマ》~ “清らかな女神よ”
V.Bellini : «Norma» ~ “Casta Diva che inargenti”
レオンカヴァッロ:《道化師》~ “大空を晴れやかに”
R.Leoncavallo : «I pagliacci» ~ “Qual fiamma avea nel guardo!....Stridono lassù”
エルケル:《バーンク・バーン》~ “バーンクお願い私を殺して”
F.Erkel : «Bánk bán» ~ “Ölj meg engemet Bánk…”
チレーア:《アドリアーナ・ルクヴルール》~“私はつつましい芸術のしもべ”
F.Cilèa : «Adriana Lecouvreur» ~ “Ecco respire appena….Io son l’umile ancilla”
プッチーニ:《蝶々夫人》~ “ある晴れた日に”
G.Puccini : «Madama Butterfly» ~ “Un bel dì, vedremo”

※演奏家の希望により、曲目等公演内容に変更が生ずる場合もございます。あらかじめご了承ください。
※未就学児童の入場はご遠慮ください。

アンドレア・ロスト
ソプラノ・リサイタル

2015年2月4日(水)19時
Wednesday, 4 February 2015 at 7p.m.

紀尾井ホール
Kioi Hall

ピアノ:浅野菜生子
Pianoforte:Naoko Asano

チケット発売日

友の会優先発売:好評発売中
DM会員優先発売:好評発売中
一般発売:好評発売中
  
*友の会およびDM発売は東京プロムジカのみで受付

チケット価格

S:¥11,000
A:¥8,000
B:¥6,000

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http://l-tike.com

主催:
東京プロムジカ

後援:
ハンガリー大使館

 
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