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ノルマ・ファンティーニ ソプラノ・リサイタル

ヴェルディをヴェルディらしく、
プッチーニをプッチーニらしく歌える稀な歌手

香原 斗志(オペラ評論家)

 歌手がいないからなあ……という嘆きが、このごろよく聞かれる。いや、日本はもちろん、世界中で毎日、数え切れないほどのオペラが上演されているのだから、歌手は大勢いる。それでも、やはり、歌手がいないのである。特にヴェルディやプッチーニを歌って聴き手をうならせることができる歌手は、テノールやバリトンにかぎらず、ソプラノについても絶滅間近ではないかと思われるほどいない。そんな中で、ひとり気を吐いているのがノルマ・ファンティーニである。とりわけ《アイーダ》のタイトルロールをはじめとするヴェルディの諸役を、様式感を損なわず、表情豊かに、なおかつ、やっぱりヴェルディはイタリアの声でなくっちゃ、と思わせてくれる純度の高い響きを聴かせてくれる歌手がいま、彼女を措いてほかにいるだろうか。

 トリノ近郊のクーネオで生まれ、地元の音楽院を卒業後、87年にスポレートでチマローザの《マルマンティーレの市場》という知られざる作品に出演してキャリアを開始したファンティーニは、間もなくヴェルディをはじめとするリリコからリリコ・スピントの役柄で頭角を現し、96年にはリッカルド・ムーティが指揮するボーイト《メフィストーフェレ》のマルゲリータを歌ってミラノのスカラ座にデビュー。日本の新国立劇場のこけら落とし公演の《アイーダ》で、このタイトルロールにはじめて挑戦し、喝采を浴びたのは翌97年のことだった。あのとき、ダブルキャストの一方のマリア・グレギーナの歌も迫力はあったけれど、いまだ線が細いながらも、細部までしっかりと構築された歌が、若きテバルディを思わせるようなクリアな声で歌われるのを聴いて、ファンティーニという歌手の名を深く心に刻んだのを忘れない。

 以後、アイーダ役は彼女の十八番なって、すでに世界中で百数十回歌っているほか、同じ新国立劇場の《トスカ》などで、記憶に残る歌唱をたびたび披露してくれたのはご存じのとおりである。そのほか《オテッロ》のデズデーモナや《ラ・ボエーム》のミミをはじめ、バイエルンでもMETでも、歌手が「いない」と嘆かれている諸役を歌って欠くことができない存在になっている。

 いま、イタリアオペラの殿堂であるはずのスカラ座でも、ヴェルディやプッチーニの作品でイタリアの声を聴くことは困難になっている。ドラマティックな役柄となると、決まって英米系の、あるいはスラヴ系の歌手たちに任される。結果、劇場を振るわせるような豊かな声にかぎるなら、めぐり合える機会は少なくないけれど、作品に求められている凛としたフレージング、明瞭なイタリア語、透明でみずみずしい響きは、滅多に聴かれなくなって久しい。しかし、ファンティーニはそれを聴かせてくれる。ファンティーニの声は、歌は、ヴェルディの凛とした旋律、躍動感と相性がいい。それはいわば“民族の血”とでも言うべきものなのだろうが、加えてイタリアの声からは失われつつある豊麗さと、現代の歌手らしい細部にまで気配りが行き届いた様式感と構成力を兼ね備えているから、彼女の存在は貴重なのである。

 いま、40代のファンティーニの声は、まさにヴェルディやプッチーニをはじめとする諸役を歌うのに最も適した円熟のときを迎えている。その時期に、その魅力を総ざらいできるリサイタルにめぐり合えることの幸せをかみしめたい。今回は、彼女の原点ともいうべきイタリア古典歌曲を多めの前菜をぜいたいく味わったあとで、ドニゼッティの《アンナ・ボレーナ》のアリアでは、知られざる“技巧派”の側面が披露されることだろう。そして主菜にはボーイト、ヴェルディ、プッチーニ、チレーアらのアリアが用意されている。それに適した歌手が「いない」数々のアリアを、それに適した声で聴ける喜び。ヴェルディの声とは、プッチーニの声とは――それを知る絶好の機会でもある。

 
曲目

前半

スカルラッティ: 私を苦しめないで
A.Scarlatti: O cessate di piagarmi

カルダーラ: 君たとえつれなくとも
A.Caldara: Sebben, crudele

ペルゴレージ: もしあなたが私を愛し
G.Pergolesi: Se tu m’ ami

グルック: おお、私のいとしい人よ
C.W.Gluck: O, del mio dolce ardor

ボノンチーニ: あなたをたたえる栄光に
G.B.Bononcini: Per la gloria d’ adorarvi

スカルラッティ: 胸の悲しみ
A.Scarlatti: Sento nel core

ジョルダーニ: いとしい私の恋人
G.Giordani: Caro mio ben

スポンティーニ:《ヴェスタの巫女》~ “ああ、不幸な人々を守護する女神”
G.Spontini:《La vestale》~ “O nume tutelary”

後半

ドニゼッティ:《アンナ・ボレーナ》~ “私の生まれたあのお城へつれていって”
G.Donizetti : 《Anna Bolena》~ “Al dolce guidami castel nation”

ボイト:《メフィストフェレ》~ “いつかの夜、暗い海の底に”
A.Boïto : 《Mefistofele》~ “L’altra notte, in fondo al mare”

ヴェルディ:《仮面舞踏会》~ “死にましょう、でもその前にお願い”
G.Verdi : 《Un ballo in maschera》~“Morrò, ma prima in grazia”
     :《ラ・トラヴィアータ》~ “さようなら過ぎ去った日よ”
     :《La Traviata》 ~ “Addio del passato”
     :《オテッロ》~ “アヴェ・マリア”
     :《Otello》~ “Ave Maria”

プッチーニ:《トスカ》~ “歌に生き、恋に生き”
G.Puccini : 《Tosca》~ “Vissi d’arte, vissi d’amore”

チレーア:《アドリアーナ・ルクヴルール》~ “私はつつましい芸術のしもべ”
F.Cilèa : 《Adriana Lecouvreur》~ “Io son l’umile ancilla”

プッチーニ:《マノン・レスコー》~ “捨てられて、ひとり寂しく”
G.Puccini : 《Manon Lescaut》~ “Sola perduta, abbandonata”

演奏家の希望により、曲目等公演内容に変更が生ずる場合もございます。あらかじめご了承ください。
※未就学児童の入場はご遠慮ください。

ノルマ・ファンティーニ
ソプラノ・リサイタル

2010年10月21日(木)19時
Thursday, 21 October 2010 at 7p.m.

東京オペラシティコンサートホール
Tokyo Opera City Concert Hall

ピアノ:浅野 菜生子
Piano:Naoko Asano

チケット発売日

友の会優先発売:好評発売中
DM会員優先発売:好評発売中
一般発売:好評発売中

チケット価格

S:¥12,000
A:¥9,000
B:¥7,000
C:¥5,000

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東京プロムジカチケットデスク
03-3372-7050

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主催:
東京プロムジカ

後援:
イタリア文化会館

 
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